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ファミリーマート 店舗チェックは全社員で


 
2003年5月25日の日経新聞の記事によると、コンビニチェーンのファミリーマートは、全社員に店舗運営をチェックするはがきを配布し、立ち寄った店舗の接客や清掃状況を抜き打ちで調べるそうである。一部地域では取引先にも要請するそうだ。詳しくは新聞記事を読んで頂きたい。
 この取り組みの是非はどうだろうか。多分、賛否両論になると思う。
狙いは分かる、上手くいけば良い事例となろう、しかし、上手くいかない可能性も高い。成果の有無は運営次第ということだろう。他の企業が取り入れるかは別として、これは非常に面白い事例であり、議論する価値は高いと思う。
 さて、私の意見は、この取り組みを招いた事こそが問題だと思う。それは、店舗指導員(SV:スーパーバイザー)の能力や職務に問題があることを示している。コンビニの場合はFC店舗が殆どであり、SVの重要性は非常に高いものである。にも拘わらず大手間でさえ日販額に大きな差がある、それはなぜか?
 日販額の差異は、企業力(看板・MD・システム)、オーナーの能力、店舗立地で決まる。実際に店舗を見れば分かるが、MDやシステムにはそんなに差異はない。また、看板にしても最寄性が非常に高く消費者は近い店に行くのであって顧客からすれば看板の違いは大した差ではない。立地については、店舗数が多いため一概には言えないが、オーナーさえいれば他社競合だけでなく自社競合していても出店する企業があるのは事実で日販額の偏差の要因に該当する。オーナーについて言えば元来偏差はなく、現状の偏差はSVの指導能力によるものである。
 すなわち、ファミリーマートのSVの店舗指導能力に何らかの問題があるがために、このような取り組みを行うのであろう。ファミリーマートは大手であり、マニュアルなど指導要綱に不備があるとは思えない。という事はSVの運営制度の問題ではなく、多数いるSV間での能力偏差が大きいためではないだろうか。
 この取り組みの問題点は、 部署もキャリアも能力も違う社員のチェックが本当に良い事なのか。例えば、商品担当が、自分の部門についてチャンスロスが多いから発注数を増やせとか、特定の店舗に集中するような可能性はあるだろう。また、何が良くて何が悪いのかの“物差し”なくして、誰がどう判断するのだろうか?
 このような取り組みをする前に、SVの能力偏差をなくす事が最優先だと思うのだが。

能力偏差について
 この能力偏差は非常に大きな問題であって、どのような企業・組織であっても発生しうる。この能力偏差が大きくなると企業の成長を抑止する、あるいは破綻への兆候でもある。
 このSVの能力偏差とは、同一職務での偏差すなわち水平の偏差である。スーパーでもそうだが、店長という同一職務であっても能力偏差が著しい企業もある。水平の偏差が発生するのは、人事考課や能力開発・教育の不備が原因である。特に人事考課に客観性がなく、また業務遂行チェックも不十分なためである。水平の偏差が大きいと、全体が標準偏差(中位)より下に下がる。
 もっと注意しなければならないのが垂直の偏差である。垂直の偏差とは、上級職ほど能力が高いという組織前提に対して、逆転している場合である。これは大手チェーンでも見られる。スーパーなどは創業から年数はそれほど長くなく、まだ企業規模が小さな段階で入社した社員が現在要職に就いていると思うが、果たして能力があるから現職にあるのだろうか。実際には、規模が大きくなって入ってきた4大卒など優秀な社員と能力偏差が逆転しているケースは案外多いのである。
 中小のスーパーも優秀な人材を確保しやすくなった事でリクルート活動に力を入れているが、上手く採用できたとしても現状の社員との能力偏差が発生する可能性は非常に高い。職務に対する能力は、企業規模は関係ないはず。300店舗の企業の店長であれ10店舗しかない企業の店長であれ、同じ業態であれば同レベルの能力が必要だという事である。商品部など本部スタッフもしかりである。優秀な人材を採用すると同時に既存社員のスキルアップを実施することと、公正な人事考課制度が不可欠になるであろう。


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