戻る

「サービスが伝説になる時」を読んで


     書籍名:サービスが伝説になる時  著者:ベッツィー・サンダース著 出版社:ダイヤモンド社  

 この本は、カスタマーサービスで有名なアメリカの百貨店ノードストロームの副社長であったベッツィー・サンダース女史の著書である。小売企業の人事担当者が読んでいる書籍と話題になった。私も取引先の小売企業から絶対に読むように言われ購入した。ここでは、ノードストロームのカスタマーサービスや本の内容についてはコメントはしない。
  さて、私に読むように言われた方に読書後の意見を聞かれ困った。なぜなら、ノードストロームのカスタマーサービスは素晴らしいものであるが、それはこの企業の企業理念に立脚しているものであって、他の企業、他の業態には必ずしも該当しない。それよりも逆に小売企業(経営者・人事担当)は何を学んだのかに興味が湧いた。私がこの本で着目したポイントは以下のようなものものである。

・ベッツィー・サンダース女史がパートから副社長に昇格したこと
 
  日本の大手小売企業では絶対にあり得ない。契約社員が殆ど、社員登用すらまれである。先の担当者に御社でも有能なパートであれば取締役や執行役員になることは可能か問うと・・・書くまでもないでしょう。この本で人事担当が学ぶべき最大のポイントは、能力のある人材を登用できる人事制度や人事考課にすることであろう。
・ノードストロームの業態は百貨店であるが、日本の百貨店とは大きく違う
 ノードストロームの2001年度の売上高は約56億ドル(日本円で6700億円)、店舗数156店である。一店舗平均の売上高は43億円であり、日本の百貨店とは大きく違う。この売上高と店舗数で見ると、日本のGMS企業に近い。私も米国でノードストロームを視察したが、店舗も小さく日本の百貨店とは印象は全く違った。どのように説明すれば難しいが、日本のは日本語の百貨店、ノードストロームは日本語の百貨店ではなく英語のデパートメントストア?。
・ノードストロームを参考にすべきはGMS企業であった
 実際のノードストロームを見て感じたのは、西友やマイカル、ユニーが目指したアップグレード型GMS、あるいはヨーカ堂のロビンソンが参考にすべきではと。本質的な業態は違うが、これらの業態はクオリティーの高いMDとGMSよりも優れたカスタマーサービスによって既存GMSとの差別化を意図したはずだったからである。ではなぜ出来なかったのか、多くの要因があるが、いくつかあげると、主力のGMS業態の範疇(仕組・意識)から抜け出せずクオリティの高いMDができなかったこと、資本費コストの高い日本ではカスタマーサービス度を高めらなかったことなど。

 結論としては、ノードストローム、ウォルマート、業種は違うがウォルト・ディズニーなど、創業者の理念を忠実に具現化しようとしている。日本の企業は、理念の言葉自体があいまいで言葉だけ斉唱するだけである。今一度、自社の経営理念、企業目標を見直そう。
 私が良く話しするのは、目的があってその手段を見つける・作るのであって、手段があって目的を決めるのではないということ。
    ×今まで以上の性能のロケットエンジンを開発しよう(日本のロケット開発)
    ○60年代中に人類を月に送ろう(アポロ計画)
    ×新しい鉄道・動力を開発しよう(リニア、いつになったら?)
    ○東京オリンピックまでに、東京・大阪間を3時間で結ぼう(新幹線)
    ×POSシステムを導入したら単品管理ができる・しよう(多くの小売企業)
    ○今以上の単品管理が必要でありそのためにPOSシステムを導入する(ヨーカ堂)




戻る